前回、前々回と六ヶ所村の核燃料再処理施設の基本事項・デメリットについて見てみました。
《前々回:六ヶ所村の核燃料再処理施設は必要か?(起)》
《前回:六ヶ所村の再処理施設の問題点(承)》
本日は、それをさらに突き詰めて考えたいと思います。
基本的には、私は六ヶ所村の再処理施設は必要だと思っています。今すぐ稼動すべきかは別として、今回はなぜ必要だと考えているかの論拠が記事のベースになっています。
ご意見・反論、お待ちしております。
~後編の目次~
■前編の結論の落とし穴
■シナリオプランニング~最良と最悪の両プラン~
■将来の子供たちのために・・・
■いま、すべきこと
前回、工場のデメリットとして、以下の7つを挙げました。
1)現在の再処理施設では、完全に100%放射能を防ぐことが(コスト的に)難しい
2)施設から出る高レベル放射性廃棄物の処理方法が未決定(外国にも持ち出せない)
3)使用済みMOX燃料の処理方法が未決定(2010年から検討開始)
4)抽出したプルトニウムが核兵器に転用しやすいため、テロに狙われるリスクがある
5)抽出したプルトニウムで発電する高速増殖炉の目処が立っていない
6)同じく、MOX燃料にした場合でも、日本ではまだ発電先が少なく消費しきれない
7)再処理にはコストがかかる
これらは、現時点(2007年)で考えた場合のデメリットです。
地球上のエネルギーを考える観点で一番重要なのは、将来にわたってどうしていくべきか、という観点が最も重要です。
なぜならば、今、我々は地球温暖化や環境破壊などの岐路に立たされており、将来の人類のために今の地球を残さなければなりません。
現時点でリスクがあるから、とか、コストが見合わないから、等の理由で考えるのではなく、将来にどうなるのがベストか、最も現実的で可能性があるのはどの選択肢か、という観点で考えなくてはなりません。
もちろん、だからといって、壊滅的な被害を受けてからでは遅い、ということも考慮に入れ、リスクを最小限にとどめる、いわゆる「1か0かの2次元的な考え方ではなく、現時点で取りえる最善の策をとる」必要があります。
その観点で考えるときには、その時々で変わるようなメリット・デメリットの論争は意味が無く(もちろん考慮はしますが)、シナリオプランニング、という考え方に基づいて議論する必要があります。
《参考:シナリオ・プランニングとは》
世間的には、ロイヤル・ダッチ・シェル社が石油高騰のシナリオを事前に用意していたことによって競合他社が高騰した石油によって被害をこうむった最中、一人勝ちしたことで有名になりました。
この手法は、簡単に言えば、最良のケースと最悪のケース等、いくつかのシナリオを想定して不確定要素をハンドリングする考え方で、エネルギー政策のような、将来の不確定要素が多い場合には最も有効な考え方です。
この方法論の最も重要なメッセージは、“着眼大局・着手小局”(Think Global , Act Local)です。
小事はおろそかにしてはいけませんが、ただ小事によって大局を決めてはいけない、ということです。
まずは大局の観点。次に、そこで派生する小事を一つずつ着実に解決する姿勢で方向を決めなければなりません。
なぜならば、大局観を失って将来を決めれば、子供たちに今の地球を残すどころか、さらに悪くして与えることになってしまいますから、それはなんとしても避けなければなりません。
ここでは、六ヶ所村の再処理施設がある場合とない場合について考えてみることにします。ターゲットは切りの良いところで2050年。
考える際の重要なファクター(要因)は、
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最終的な電源。(原発/新エネルギー、等)
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最終的な電源までの移行プラン
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原発ゴミ(高レベル放射性廃棄物)問題
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環境への影響
あたりを考慮してみます。
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(2100年辺りを想定して)再処理工場が... |
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“無い”ケース (脱・原発を目指した場合) |
"“在る”ケース (原発を推進した場合)" |
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最良のパターン |
最悪のパターン |
最良のパターン |
最悪のパターン |
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主力電源 はその後 どう なっている? |
新エネルギーが開発され、原子力を代替し、主力電源になる。
それまでは、現存の電子力でまかなう。
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新エネルギーは依然として既存需要をまかなうほどではない。
-風力:世界的に見ても、風が年中吹いている場所は局所的
-太陽光:効率は上がるも、雨・曇の日の発電リスクは解決できず
-バイオマス:コスト的な問題により、進まず。工場の面積に対する発電効率が悪すぎ。
-地熱:火山帯がある国でしか使えない。(アイスランド等) |
MOX燃料の発電(プルサーマル)を経て、高速増殖炉に切り替え
この技術は世界初なので、日本から海外に技術移転 |
高速増殖炉の実用化は依然目処が立たず
また、MOX燃料の発電(プルサーマル)が行われるも、その再利用も目処が立たず
さらに、六ヶ所村の周辺は、白血病・癌地帯になってしまう。。。 |
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原発ゴミは どうなる? |
新エネルギーに代替されるので、原発ゴミは無くなる
また、それまでに発生した原発ゴミは、中間貯蔵プールではなく、地中処理する |
相変わらず発生し続ける |
発生した原発ゴミは地中処理 |
結局、原発ゴミは中間貯蔵プールに置かれたまま。プールがどんどん増える状況。 |
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要は、どのパターンでも原発ゴミは発生してしまう問題 |
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温暖化 問題は? |
○ 温暖化も解決 |
× そうこうしているうちに、CO2の濃度が向上、平均気温3度上昇。 |
○ 温暖化も解決の糸口が見える (高速増殖炉が世界に普及し始める) |
○ 原発に移行しているので、温暖化は多少は緩和される (中国、インドも原発を持つようになる) |
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“無い”ケースを選択した場合、温暖化がまずいことになる可能性がある |
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現実化の 可能性 |
× 無理 |
○ 非常にあり得る |
△ 難しい |
○ あり得る |
※これは、上記で“無いほうと在るほう、どちらを選びますか?”という話です。
本来はひとつひとつにシナリオの項目毎に分解して可能性を図りますが、ここでは簡略しています。
高速増殖炉の実現可能性が△で、新エネルギーが×、というところに違和感を感じる方もいらっしゃるかもしれませんね。
高速増殖炉は、理論的には出来ることがわかっているが、運用レベルで問題あり、ということで△にしました。
一方、新エネルギーは、もちろん理論的には可能ですが、主力電源になり得るか、という観点では不可能です。
日本の電力総需要(2004)は、9700億kwですが、内訳は、
| 原子力 |
:2,824億kWh(29.1%) |
| LNG |
:2,491億kWh(25.7%)=天然ガス |
| 石炭 |
:2,397億kWh(24.7%) |
| 水力 |
: 970億kWh(10.0%) |
| 石油 |
: 798億kWh( 8.2%) |
| ガス |
: 140億kWh( 1.4%)=LPG、暦混合物、その他ガス |
| 新エネ |
: 51億kWh( 0.5%)=廃棄物発電、風力、太陽光、バイオマス、その他 |
| 地熱 |
: 34億kWh( 0.3%) |
(経済産業省調べ)
原子力と新エネでは、まだまだ50倍以上の差があります。
もちろん、環境負荷の低い新エネは否定しませんし、今後も継続的に伸ばしていかなければいけない分野ですので、今のところ2010年には3%まで持っていく計画のようです。
《参考》
http://www.iae.or.jp/energyinfo/energykaisetu/kaisetu9.html
ただ、やはり問題はコスト。
再処理工場を作るお金(2兆)を研究開発にまわせばよい、という政治家がいますが、仮に原子力を太陽光で賄おうとすると、330兆円ものお金がかかります。いわば、ケタが違いすぎるんですね・・・。
《参考》
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/energy-in-japan/energy2006html/newenergy.html
では、そもそも電力需要を減らせばよいではないか、という人もいます。
しかし、省エネはもう何十年も前から叫ばれていて、いろんな取り組みがされていますが電力総需要は減るどころか増え続けています。

家庭用でさえ、電力危機の2003年に一瞬減りましたが、その後すぐに戻っています。
CO2の話は電力とは別ですが、京都議定書で、2012年までに90年度の水準に戻すと日本はコミットしましたが、今のままではとてもではありませんが達成できそうもありません。
なぜ、電力を減らせないか。
恐らく、
Q:あなたは自分の使う電力を年間で減らすことができますか?
と聞かれたら、多くの人は Yes と答えることができるでしょう。
次に、
Q:では、あなたは隣人の使う年間電力を減らすことができますか?
と聞かれたら、多くの人が No と答えるでしょう。
中には、それでもYes と答える人はいるかもしれません。
そして最後に、
Q:では、中国(or 外国)の電力を減らすことができますか?
答えは Impossible となるはずです。
これから世界は90億の人口時代を迎える中、消費エネルギーは増えども減ることはあり得ないでしょう。
ライフスタイルを変えて電力を減らしましょう、というのは、もちろん有意義なことですし、ぜひ推進すべき話ではありますが、それに全面的に頼っても良い話ではありませんし、あくまで自助努力の話であって、技術の話と違い、人間のやることですから100%実現する方が難しいわけで、未来をそこに託してはいけないのです。
電力を減らすためには、仕組みから変える必要があります。人の善意や意識では限界があります。
IPCCが、先の報告書で“人々のライフスタイルが変われば・・・”という報告を出しましたが、要は投げ出してしまったのと同じ内容だと思います。
では、最後の望みとして、電力の総需要に対する規制をかければよい、という人もいます。しかし、これを実現しようとすると非常に難しい事態が起こります。
例えば、電力ピーク(夏場の昼間)の削減を考えた場合、百貨店・コンビニなどコンシューマー向けの商売をしているところの冷房を弱める必要が出ます。または電車の中の温度が上がったりします。
当然、そうすると客足は鈍ります。
しかし、そんな中、自家発電設備を持っている六本木ヒルズ等は冷房を弱める必要が無いので、自家発設備を持っているところがビジネス上有利になります。
しかし、自家発は石油・ガスを燃やして電力を得るので、温暖化ガス(CO2)を排出し、環境には悪影響を及ぼします。
結局、規制をかけて電力会社の電力は減っても、別のところで環境に悪い電力を作られてしまったら何のためにやってるのかわからない事態になります。
もちろん、上記はあくまで仮説ですが、例えばこんなニュースを見てもわかるように、電力需要が減ることは無く、むしろ消費する方向に世の中は走っているようです。
《教室にエアコン、蒸し暑さ追放──小中公立校、学力向上・2学期制にらみ》
学校にエアコンなど不要!と声高に叫んだところで、我が子に快適な環境で勉強してもらいたいのは親の人情ですから、冷房がある学校と無い学校があったときに、冷房がある学校を選んでしまうのは親心としては仕方ないのではないでしょうか・・・
(それでも環境のために子供にはエアコン無しの学校に入れさせる!という親御さんがいたら見てみたいものです。)
話が飛びましたが、シナリオプランニング的に見て、再処理工場“無し”の選択をした場合、最も可能性が高いのは今と変わらないケース。温暖化防止の観点からも、地球に悪影響を与え続けることになります。
長くなってきたので、これ以降は最終回に回します。
ただ、結論を簡潔に書くと、
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再処理施設は将来のためには必要。
(今すぐに本格稼動するかは別の問題ですが、存在を否定してはいけない)
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なぜならば、代替手段の実現可能性が低いから。
(それよりも、核の再利用の方が可能性が高い)
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そもそも電力を抑えることができず、ましてや世界で人口が増える中、減らすことは不可能。
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その需要に応えるためには、技術革新で補わざるを得ず、そのために必要な存在を否定しては進歩を放棄してしまうのと同じこと
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結論として、将来の子供たちに地球を残すためには、今のリスクと適切に向かい合いながら、“No!”と言うのではなく、“Yes , But.”でじっくりと進めるしかないのだと思います。
さて、次回は、まとめとして具体的にどうしたらよいか、何をすべきかについて書きたいと思います。
《最終回:六ヶ所村の再処理施設に関してできること》