前々から書こうと思っていたこのコンテンツ。
時間が経っているうちに、3ヶ月前に久夛良木氏が退任し、とうとう任天堂が7月初旬、家電メーカーの巨人ソニーを株式時価総額で初めて上回ってしまいました。
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任天堂が7月初旬、家電メーカーの巨人ソニーを株式時価総額で初めて上回った。ソニーの新型ゲーム機「プレイステーション(PS)3」の売れ行きが精彩を欠くのに対し、任天堂の「Wii(ウィー)」が絶好調を極めていることを映したものだ。 (中略) だが、この10年近くPSの後塵を拝してきた任天堂が、ついに攻守を逆転した。ゲーム関連情報誌を出版するエンターブレインによれば、使い勝手のよい家庭用ゲーム機Wiiの国内販売台数は今年6月、6対1の大差でPS3に圧勝した。 (中略) 7月3日の株式市場では、任天堂株は上場来高値の4万6700円で引け、時価総額は6兆6150億円に膨らんだ。一方、ソニーの時価総額は6兆2100億円で、任天堂は2日続けて消費者家電の雄ソニーを凌いだことになる。 http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20070719/130194/ |
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あの小さかった任天堂(社員数:3,373人;連結)が、SONY(社員数:163,000人;連結)を抜いてしまうとは、本当にエラいことです。(いろんな意味で)
今から思うと、この事を予見できるような2人の記事が1年前に掲載されていたことを思い出します。
当時、その2つの記事をみて、“これは任天堂が勝つかもな・・・”とおぼろげながら思ったことを思い出します。
(当然、時価総額を抜くまでの圧勝とは全く思いもしませんでしたが)
今日はそんなお話です。
岩田さんと久多良木さん(久夛良木さん)のインタビュー記事
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プレステ3は発売当初は在庫不足で、さも売れているような報道がなされていましたが、何のことはない、あえて生産量を抑えているだけ(というより、Blue Rayの供給が追いつかなかった、と聞きました)と言われていました。
また、SONYはWiiとの比較を恐れてか、当初は販売台数を公表せず出荷台数のみ発表するという手に出ていましたが、最近はようやく販売台数も公表するようになりました。
《2007/05/16:PS3の累計出荷台数は550万台、ただし実売は360万台--ソニーが明らかに》
http://japan.cnet.com/news/tech/story/0,2000056025,20348914,00.htm
実際、Wiiの方が2倍以上も販売されている、というレポートは多々存在します。

http://www.gpara.com/ranking/mediacreatebn/20070411wiips3.php
さて、結果から見ると、Wiiに軍配が上がった今世代のゲーム機戦争。
(あ、すいません、XBOX360はそもそも除外(^^;)
それぞれのゲーム機が発売になる前、任天堂の社長・岩田氏とSCEのCEO・久夛良木氏はそれぞれどんなことを言っていたか振り返りたいと思います。
奇しくも、2日違いでIT Proの取材記事が出ています。
その中から、象徴的な言葉を抜粋します。
久夛良木:「PS3は買ったその日から進化する」(2006/5/10)
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久多良木氏:パソコンなんて重厚長大の最たるものの一つでしょ。でも,ソフトウエア産業が小さくなっているかといえば,そんなことはない。何万人かかっても出荷が遅れるソフトウエアがあるのも事実だが,少人数でも新たなソフトウエアを開発する事例もたくさんある。産業としては大きくなっている。PS3もコンピュータそのものなので,同じことが当てはまるはずだ。
久多良木氏:僕は,PS3はコンピュータそのものだと思っている。コンピュータでは,CD-ROMからプログラムを直接実行するのではなく,ハードディスク装置に一度ダウンロードする。PS3でも,HDDはそういう利用方法になるだろう。つまりキャッシュ的な役割を果たす。使い方によってはHDDの容量が足りなくなるのは確かだ。そういう人は,大容量HDDを買い足せばいい。
来年か再来年には120Gバイト品が出るかもしれない。仕様の違いは,別バージョンではなく,別コンフィギュレーションのPS3と考えてほしい。だってPS3はコンピュータなんだから。顧客ごとに仕様が異なるBTO(built to order)で売ってもいいくらい。それを前提に,内部はモジュール化して設計してある。家電や従来のゲーム機とはまったく違う発想で内部を設計した。コンピュータを設計する発想で,拡張性を考え,標準インタフェースを採用し,各種の部品を選択した。 (以下略) |
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一方、任天堂の岩田氏:「失ったものを取り戻したい」(2006/05/12)
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岩田氏:任天堂は,どうやったらゲームを楽しんでくれるユーザーを増やせるか,この命題に数年間,挑み続けています。私も技術屋なので,技術を否定する気はまったくない。新しい技術が出て,それを応用するのはすごいことだと思う。ただ,もっと絵がきれいになっても,これ以上ゲームをやる人は増えないと危機感を覚えた。それじゃ,どうすればよいか。そこで目を付けたのが,ユーザー・インタフェースだった。
岩田氏:誤解を恐れずにいえば,「任天堂は次世代機を作っていません」。次世代というのは,今までの延長にあることを意味する。僕らは,今までの延長線を進んでも,マーケットが広がらないと考えている。むしろ狭まってしまうかもしれない。ゲームを楽しむ人を増やすには,新しい魅力を足さなければならない。今のゲームは操作が難しくなっていて,周囲の人がおいそれととっつきにくい。ゲームの経験がない人は,誰かがやるのを見ているだけで,自分でやろうとはしない。それが現実です。
なので,誰でも使ってみたくなるようなインタフェース,それを作りたかった。例えば,ペンで書くというのは誰もがやっている日常行為だから,DSにタッチペンを付けた。その結果,「脳を鍛える大人のDSトレーニング(脳トレ)」では,ゲームをやったことがなかったおじいちゃんやおばあちゃん,おかあさんまで遊ぶようになった。あれだったら,人がやっているのをみて,「自分でもできそうかな」と感じてくれる。
ゲーム業界にとっては,裾野を広げる方向と,もっと高性能を追求する方向の両方があっていい。僕らは前者の道を選んだのであって,「高性能化の道がけしからん」なんていう気はさらさらない。あとはお客さん次第,自分の提案を支持してくれるか,他社さんの提案を支持するのか,審判を待つのみです。 |
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久多良木氏はPS3をコンピュータと称し、一方岩田氏はWiiをゲーム業界の裾野を広げるために新しいインタフェースに挑戦した、と言っています。
また、2人のインタビューで共通的に「ネットワーク」に対して言及している箇所を抜き出してみました。
| 久多良木氏インタビュー |
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岩田氏インタビュー |
時代はネットワークでしょ。それぞれの実機用に,わざわざ「お皿(ディスク)」を用意する必然性はないかと考えた。なので今回,展示会場のデータ・センターに複数の開発ツールをスタックしておき,それをネットワークにつなぎ,楽しんでもらうことにした。しかも,その開発ツールは,各社の開発拠点とつながっている。
となると,展示会の会期中,毎日,ゲームのデータをFTPでアップデートできる。これは,アーケード・ゲームを開発している人には当たり前の発想だが,コンシューマ相手のゲーム開発者はどうしても「パッケージ」にこだわってしまう。これからはコンシューマ向けのゲームも,ネットワークを使った発想に変わっていくことでしょう。
開発会社とお店,そしてユーザーがネットワークにつながった状態で発売日を迎えるってことだって十分にあり得る。BD(Blu-ray Disc)はキー・ディスクのような存在で,ネットワークを使ってどんどんアイテムが更新されるとか。自分が店頭で遊んでいた状態をネットワーク経由で,自分のPS3にキャリーオーバーする(持ち越す)こともできる。手元にプログラムがあって,ネットワークの向こうにデータがあって,PS3の世界が無限に広がる---。 |
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ひとつ具体的な例をお話ししましょう。Wiiが24時間動作可能なモードでインターネットに接続されているとする。これを使えば,夜中のうちに任天堂が各家庭のWiiに向かって「今月のニンテンドーDSの試遊ソフト」をプッシュ型で送りつけたりできる。ユーザーは翌朝起きると,WiiのLEDランプがピカピカと光っていて,任天堂から何か届いているのを見つける。そして自分のニンテンドーDSを持ってきて,Wiiを経由して試遊ソフトをダウンロードするといった使い方を想定している。
これはもちろんお店ではすでにできることだが,これが家の中でできたらうれしいと思う。「自分で取りに行け」と言われるより,プッシュ配信されて家の中に送り届けられることに,ものすごく大きな価値がある。 |
両者とも、ネットワークを使ってゲームソフトを配信する、という構想は同じように思えます。しかし、アプローチや捉え方が全く違うのが面白いところです。
2人の経営者は、経営者としても優秀な方(独特な方?)だと思います。
ですので、私がどうこう言えるようなものではないですし、そもそも言ったところで結果論にしかなりませんので、その時点でどちらが正しいのか?と公に聞かれたら答えられないと思います。
ただ、技術者としての私の感覚で言うと、久多良木さんにはぜひ頑張って欲しかった、というのが正直なところです。
世の中にブレークスルーを起こすきっかけになるのは、やはり“技術”だと思います。
残念ながら、PS3は既存の延長線上での技術を追ってしまったのでブレークスルーにはなり得ませんでしたが、久多良木氏の構想である CELL は、日本の半導体技術の復興をかけた"夢" があったように思います。
一方、ビジネスコンサルタントとしての私の感覚で言うと、マーケットに受け入れられるのは、上記の記事だけで見れば圧倒的に任天堂です。そこには新しい価値の提案があるし、試行錯誤を重ねてより完成度の高い魅力的な "何か" が垣間見れます。
本来、マーケティングはSONYのお家芸だったはずだけに、技術思考に偏りすぎてしまった久多良木氏のこのインタビューに、今のSONYの没落を予兆する象徴的な示唆が含まれていたのではないでしょうか。。
P.S.
あぁ、任天堂の株を買っておけばよかった。(笑) ←結果論。orz
P.S.2
逆に言えば、総資産額8分の1程度の会社が時価総額でSONYを抜いた、というのは、任天堂株が明らかなバブルか、もしくはSONYが割安、のどちらかということでしょうか・・・。