またしても日経オンライン記事ネタで申し訳ないですが。(^^;
ワタミの社長、渡邉美樹氏が連載している記事を読んだのですが、どうも釈然としません。
簡単にまとめると、
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民間企業は、厳しい競争を経ており、公的な効果が社会に生まれる
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民間企業は社会からの非常に厳しいチェックにさらされている
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よって公的サービスを担うのにふさわしいのは民間である
という市場礼賛のスタンス。
政治家が選挙戦で言ってたり、一経済人が言うのであれば理解するのですが、よりによってコムスン社の譲渡先に名乗りを上げているワタミの社長さんの発言としてみた場合、非常に違和感を覚えてしまいます。
根本の疑問は、
“なんで今の時期に、この人こんなこと言うのだろうか?”
というところを考えたいところですが、あまりにも情報が少ないのでわかりません。
変わりに、今日は、民間の方が市場にサービスを提供するのに、民と官では、本当に民間がふさわしいのだろうか?ということを考えたいと思います。
民間の方が公正にサービスできる?
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まずは、ワタミ社長の発言をチェック。
発端は、コチラの発言に集約されるでしょうか。
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いざ私のような人間が「いまこそ公的なサービスもすべて民間に任せて、自由競争させればいいんだ」と主張すると、多くの人たちが「いや、そこまではちょっと……」と腰砕けになってしまう。肝心なところで、「官」に対する日本人特有の「お上意識」が顔を出す。「官=公」の刷り込みには、それほど根深いものがあります。
民間企業に「公」の仕事は任せられない、ということは、民間企業ではこうした条件を満たせない、ということなのでしょうか? 己の利益ばかりを追求し、消費者=国民のことなど考えない、それが民間企業、ということなのでしょうか?
とんでもない屁理屈です。 |
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この主張には同意できます。
民間でできることはできるだけ市場原理にさらして公平に競争を行う、という方が上手くいくケースが多いからです。
しかし、そうでないケースもあります。
どんなケースが、それに該当するか、と言うところが"今"における「論点」のはずで、一般的には、
1)民間が行って一番まずいのが市場を独占してしまうケース。
2)ユニバーサルサービスの実現を民間でどのように行うか
3)運営上の透明性の確保
の3点だと思います。
1)は、そのために独占禁止法がありますが、グレーゾーンはあります。(通信業界や電力業界、海外ではマイクロソフト等)
ただ、ワタミの事業には関係ないので、この記事では取り上げません。
2)の「ユニバーサルサービス」とは、“日本全国において公平かつ安定的な提供の確保が図られるべきサービス”のことです。
ワタミ社長は記事では言及しておらず、恐らく次回の時に書かれるのでしょうけれど、“官と民”の違いに言及するのであれば最も避けては通れない議論のはずで、この議論を避けたことによりワタミ社長の記事の信憑性が落ちているのかな、という気がします。
ちなみに、ワタミの施設介護事業では、関東圏にしか老人ホームを設置していません。
http://www.restvilla.co.jp/facility/
さて、3)の情報開示の点ですが、一般的には民間の方が優れているという認識がありますが、果たしでそうでしょうか?私はそうは思いません。
ワタミ社長の記事からいくつか抜粋しますが、
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談合や薬害、数々の税金のムダ遣いなど、何度も同じ間違いを繰り返しては、国民の生命・財産を危うくする官僚たちは、もはや国民は誰一人信じてはいない「官僚は間違わない」という原則でいまだに動いています。ごくまれにどうにもいい逃れできなくなって、しぶしぶ誤りを認めても、大した罰なんて受けません。
国民には尽くさない、税金は無駄にする、情報開示もしない。おまけに「天下りを禁止するとモチベーションが下がる」などとのうのうと口にするのです。うちの会社で、「定年後の再就職を世話してくれなければ、働く気がしない」という社員がいたら、私は彼に即刻退社してもらうことでしょう。 |
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確かに、上場企業には証券取引所からの情報開示ルールがあります。
また、会計上の不正は監査法人の会計監査によって中央省庁に報告されます。
しかし、企業に私的使い込みが果たして無いのでしょうか?
企業に天下りが無いとでも言うのでしょうか?
また、「定年後の再就職を世話してくれなければ、働く気がしない」と社員が言っただけでクビにすることは許されるのでしょうか?(当然、これをやって労基署に駆け込まれたら労働基準法違反になりますね)
企業の情報開示は、かなり限定的です。
例えば、ワタミに行って「御社の経費処理の状況や個別原価計算書、グループ企業の役員(個人名除く)の移動履歴、社員の年齢構成を見せてください」と言っても門前払いになることでしょう。
逆に、上記の情報は国に情報開示請求することが可能です。(時間はかかりますが)
つまり、企業はある一定のルールを守って運営していれば、会社のお金を自由に使ったり、天下りしたりすることが許されています。
例えば、グッドウィルの折口会長は、空のロールスロイスと呼ばれる「ガルフストリームⅤ(45億円!)を会社のお金で買ってましたしね。
そういえば、以前、「なぜ、社長のベンツは4ドアなのか?」という本も売れていましたっけ。
会社(自分)のお金なんだからいいじゃないか、と言われれば、現行のルールではその通りなのですが、上記のような1)~3)の事を考えたときに、官と民とどちらの方が「公正か?」と言われると、一概には「民間」とは言い切れないのではないかと思います。
民 or 官 という単純な二元論では割り切れない
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ワタミ社長は、続けます。
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少なくとも私は、「官not公」、そして「公=民」であると断言したい。 「官」の仕事は、たったふたつでいいのです。自由競争のためのルールを決めて、違反した者を厳しく罰すること。そして、セーフティーガードをきっちり組むことです。 たとえば外食事業でいえば、衛生と消防、あとはせいぜい深夜営業と、飲酒運転の規制だけしっかりやってくれれば結構です。 |
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「自由競争のためのルール」と言うところに市場競争万能論が見えますが、果たしでそうでしょうか?
以前の日本であれば、“成長”のために競争をし、諸外国に打ち勝つことが良しとされましたが、今は違い、「持続可能な社会」が求められているのだと思います。
ワタミは、環境への配慮や教育にも力を注いでいるので、その点は重々承知されていることだと思いますが、それ以外にも企業は何歳になっても働ける環境を提供することも忘れてはいけません。
その点では、国の役割として、外食事業において「衛生と消防」「深夜営業」「飲酒運転の規制」だけでは不十分で、「環境への配慮」「適正な労働環境の提供」等もチェックの対象になって然るべきだと思います。
また、官の役割は“自由競争のためのルールを決めて、違反した者を厳しく罰すること”とありますが、“ルールを決めること”と“ルールを運用すること”は分けて考えるべきだと思います。
ルールは、「国、社会」「消費者、国民」「企業」のそれぞれが win-win-win の関係になるように設計されなければなりません。しかし、例えばワタミが積極的に介入しようとしている介護事業は、win-win-lose のルールになっていることが一番の問題です。
これを是正するためには、ルールに関してPDCAをきちんとまわさなくてはなりませんが、ルールを決める役割と、ルールを運用する役割が一体化しているため、なかなかCheckとActionが行われないことこそが一番の問題ではないでしょうか。
民間でできることは民間に、という方向性には同意しますが、そのために今、解決すべき問題は何か、論点は何か、という点において、ワタミ社長の論法は単純に割り切りすぎなのではないかと思います。
ワタミ自体はよい企業だと思いますし、社会に貢献している企業なのですから、10年前の議論ではなく、もう少し深いところまで考えた記事を望みたいと思います。
P.S.
この辺りのことは、上場企業の社長さんですから、当然知っているでしょうし、考えているのだと思います。
しかし、あえて単純かつ一世代前の議論を持ち出して世間に発表する、、、という行動は、何か裏があるのかな?と勘ぐってしまいます・・・
(この点に関して、推測でも構わないので、どなたか言及していただけると嬉しいです)